特殊清掃と遺品整理の違いとは?状況別の特殊清掃、遺品整理作業の流れについて
目次
1.特殊清掃と遺品整理 の違いとは?
「特殊清掃と遺品整理って何が違うの?」
「特殊清掃と遺品整理はどちらを先にやるの?」
孤独死が起きたときに作業を行うことになる「特殊清掃」と「遺品整理」ですが、どういったことをしているのか、どちらの作業を先に行っているのかを知っている人は多くありません。
特殊清掃と遺品整理の作業内容は以下の通りになります。
特殊清掃とは、異臭や害虫が発生したり、汚れがひどい部屋を専門の薬剤や機械を使って清掃することを言います。
遺品整理とは、故人の残した品(遺品)を整理することを言います。
具体的な作業内容についてお伝えします。
1-1.特殊清掃とは
異臭や害虫が発生したり、孤独死やゴミ屋敷など通常の清掃では対応できない部屋を専門の薬剤や機械を使って清掃することを言います。
孤独死の場合、遺体が腐敗することで強烈な異臭が発生します。また細菌やウジ虫などが発生することもあります。何の対策もしていない一般の人が清掃作業を行おうとすると、細菌などによって感染症になる可能性が高くなります。
専門知識を持たない人が清掃作業を行うことは危険ですので、専門知識をもった業者に作業を依頼しましょう。
1-2.遺品整理とは
故人の残した品(遺品)を整理すること、例えば思い入れのあるものを形見分けしたり、不要なものを処分したりすることを言います。
遺品は次のように分類できます。それぞれ適切な方法で処分しなければなりません。
・遺産相続に関する書類等:決められた手続きに従って相続人が手続きを行います。
・金銭的に価値のある物品等:売却、または形見分けをします。
・故人にとって思い出の品:親族や生前、故人と付き合いのあった人に形見分けをします。
・廃棄処分:自治体の処分方法に従い、廃棄します。
遺品整理は特殊清掃と違い、遺族だけでも行うことが可能です。遺族が遺品整理を行うメリットは、費用を抑えられる点にあります。
しかし、下記にあげるような理由により、業者に遺品整理を任せることもあります。
・孤独死した人の遺族が遠方に住んでいる。
・孤独死の現場が賃貸物件で、契約期限が迫っている。
・孤独死した人が単身で、頼れる人がいない。
・残された遺族が高齢で、遺品整理を行うことが難しい。
・廃棄処分するものが多すぎる。
業者に遺品整理を依頼するメリットは、相続手続きなどを除き、ほとんどの作業を1日で終わらせることができることです。
特殊清掃と遺品整理をセットで依頼するケースも珍しいことではありません。もし遺品整理が大変だとお考えの場合、遺品整理も行っている特殊清掃業者にご相談することをお薦めします。
2.特殊清掃と遺品整理の作業の流れ
孤独死が起きた場合は、特殊清掃と遺品整理の両方の作業を行います。ここでは、特殊清掃、遺品整理の作業の流れについてお伝えします。
①特殊清掃1回目(簡易清掃)
②遺品整理
③特殊清掃2回目(徹底清掃)
2-1.人が立ち入れるくらいに特殊清掃を行う(簡易清掃)
1回目の特殊清掃では、一般人がマスクなしでも入室できるくらいに部屋の状態を回復させます。この段階では、消毒、汚物の撤去、汚染物質の除去、消臭、害虫駆除といった作業を行います。
2-2.遺品整理を行う
1回目の特殊清掃が終わったら、遺品整理を行います。廃棄物を処分するだけでなく、金銭的な価値のある物品の売却や思い出の品の形見分けを行う、不用品を廃棄処分するといった作業を行います。
2-3.人が住める状態まで特殊清掃を行う(徹底清掃)
遺品整理が終わったら、2回目の特殊清掃を行います。1回目の特殊清掃よりも徹底的に行い、「本当にここで孤独死があったの?」と思わせるくらいの状態まで部屋を回復させます。
腐敗臭を徹底的に消臭したり、壁紙や床が汚れていたら、必要に応じて壁紙を変えたり、床を解体し新しくしたりします。
2回目の特殊清掃を終えてようやく全作業が終了になります。
3.賃貸物件における特殊清掃と遺品整理の作業の流れ
アパート、マンション(戸建ての借家も含む)などの賃貸物件の場合、孤独死が起きた部屋については「原状回復の義務」が発生します。原状回復の義務とは、孤独死があった部屋については汚れや臭いを完全に取り除き、部屋を借りたときの状態まで回復させる必要があるということです。
特殊清掃~遺品整理の作業の流れは、第2章「特殊清掃と遺品整理の作業の流れ」にあるとおりです。
孤独死の場合、遺品のほとんどを廃棄処分します。建前上、遺族が遺品整理を行うことになっていますが、地域ごとに廃棄処分に関するルールが違うため、廃棄処分に詳しい地元の業者が、遺族立ち合いの下で遺品整理を行うことがほとんどです。
遺族が立ち会いもせず、遺品整理をすべて業者に依頼する場合は、「遺しておきたいもの」と「廃棄するもの」を明確にして業者に伝えましょう。
4.所有物件における特殊清掃と遺品整理の作業の流れ
所有物件の場合、家屋の今後の扱いによっては、2回目の特殊清掃を省略することもできます。
家屋の扱いについては、下記の3ケースが考えられます。
①今後も遺族が住む
②売却する
③取り壊す
1つずつ見ていきましょう。
4-1.今後も遺族が住む
孤独死が起きた家屋に遺族が移り住む場合、第2章「特殊清掃と遺品整理の作業の流れ」にあげたように、簡易清掃~遺品整理~徹底清掃の順番で作業を行います。
賃貸物件と違い、明け渡しの期日などは決められていませんが、遺体発見から時間が経つにつれ異臭が発生し周囲に蔓延するため、できるだけ早く徹底清掃まで行いましょう。
4-2.売却する
築年数が浅いなどの理由で家屋を売却する場合、簡易清掃~遺品整理まで行うことで、売却が可能になります。
この場合、2回目の特殊清掃である徹底清掃は、不動産会社や物件を購入した人が行うことになります。そのため、徹底清掃分の費用がかかることになり、売却額は低くなります。
徹底清掃後に売却とういうながれになることもあります。
また、孤独死が起きた事実は売買契約前に必ず伝える義務が生じます。そのため建物の評価額も下がることになります。
4-3.取り壊す
家屋を取り壊す場合、簡易清掃~遺品整理を行います。取り壊しの際に、遺品整理後の不用品が残っていた場合は、建物の解体業者が処分します。ただし、解体費や不要品処分費が別途かかります。
5.特殊清掃で費用に差が出るポイント
特殊清掃では、簡易清掃と徹底清掃で費用に差が出ます。
・簡易清掃:5万~8万円。
・徹底清掃:20万~100万円。
簡易清掃では、清掃する範囲や使う薬剤が決まっているため、おおよその金額が決まっています。そのため、各社で比較しても価格に大差はありません。
一方で、きちんと現場を確認した上で見積りを取る業者もあります。
徹底清掃では、20万~100万円と金額に幅があります。これは、汚れの具合や範囲によって金額が変わってくるからです。
また、トイレや浴槽内など、遺体が発見された場所によっても清掃費用が変わってくることがあります。
5-1.費用が掛かる清掃場所とは
特殊清掃の費用が高くなる場所は、次の4つの場所です。
①浴室
②洗面所
③トイレ
④ゴミ屋敷
これらの場所の清掃費用が高くなる理由をお伝えします。
①浴室
浴槽内に水が張ってある状態で亡くなった場合、今まで体験したことがないような強烈な臭い、ウジ虫や細菌が大量発生している可能性が高くなっています。
臭うからといって、浴槽内に張ってあった水を流すと、特に集合住宅では排水管などを通して臭いが蔓延することになります。脂や血液などは排水管のつまりの原因となります。
このような腐敗物が下水管の奥のほうに溜まると取り除くのが困難になり、清掃費用が高くなります。
②洗面所
③トイレ
洗面所やトイレなどの狭い空間で亡くなると、腐敗液の床下への浸食が激しく、床板をはがしての作業になるため、清掃費用が高くなります。
④ゴミ屋敷
ゴミ屋敷と呼ばれるような場所で亡くなると、大量のゴミが固まっていることが多く、また害虫が発生していることも考えられます。ゴミの解体、害虫駆除など大がかりな清掃が必要となり手間がかかるため、清掃費用も高くなってしまいます。
6.業者を選ぶ際のポイント
孤独死が起きた部屋を特殊清掃、遺品整理する際は「特殊清掃も作業可能な廃品回収業者、遺品整理業者」を選ぶのではなく、「遺品整理も作業可能な特殊清掃業者」を選びましょう。
害虫駆除を行ったり、異臭を嗅いでしまわないようにするために、防護服を着た作業員が特殊な薬剤を撒いて特殊清掃を実施します。
特殊清掃をメインにしていない廃品回収業者や遺品整理業者では、害虫や異臭をまき散らし、周辺住民や作業員本人に感染症の危険性を負わせてしまう可能性があります。
中でも「遺品について遺すか処分するか相談できる」「遺品の消臭ができる」特殊清掃業者を選ぶことをお薦めします。
孤独死の現場では、部屋にあるものほぼすべてが、廃棄になってもおかしくありません。貴重品があればもちろん遺すことになるでしょうが、金銭的な価値がなく、遺族にしてみれば遺すかどうか迷われている遺品に関して、相談できる相手がいるということはとても心強いものです。
特殊清掃の専門家であれば、形見分けとして残しておきたい遺品の悪臭を取り除くことができます。
ぜひ、ご相談ください。
7.まとめ
特殊清掃:異臭や害虫が発生したり、汚れがひどい部屋を特殊な薬剤を使って清掃することです。
遺品整理:遺品を整理することです。遺族でもできます。
特殊清掃と遺品整理の作業の手順は、簡易清掃(特殊清掃1回目)~遺品整理~徹底清掃(特殊清掃2回目)という流れになります。
遺品整理前の特殊清掃と遺品整理後の特殊清掃では、汚染の具合や範囲によって金額が変わるため、遺品整理後の特殊清掃のほうがどうしても高くなります。
浴室、洗面所、トイレ、ゴミ屋敷といった場所で遺体が発見されると、他の場所で遺体が発見された時よりも、清掃費用が高くなる場合があります。
特殊清掃と遺品整理を行う業者を選ぶ際は、「遺品整理を行う特殊清掃業者」の中でも「遺品について遺すか処分するか相談できる」「遺品の消臭ができる」業者を選ぶことをお薦めします。